情シス・社内IT管理
伊藤翔太伊藤翔太

【情シス向け】SaaS移行とシステムリプレイスを成功に導く管理ツールの選び方3つの基準

レガシーシステム脱却やSaaS移行を目指す情シス担当者必見。移行に伴うシャドーITや無駄なライセンスコストを防ぐため、SaaS管理ツールの導入メリットから自社に合った選び方、失敗しないアカウント棚卸しの手順まで具体的に解説します。

【情シス向け】SaaS移行とシステムリプレイスを成功に導く管理ツールの選び方3つの基準
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レガシーシステムからの脱却やSaaS移行を進める企業において、最大の課題となるのが「管理の複雑化」です。SaaSの基本的な仕組みや導入のメリット・デメリットを改めて確認したい方は、SaaSとは?IaaS・PaaSとの違いやメリット・デメリットを5分で図解 を先にご覧いただくことをおすすめします。

シャドーITの可視化や退職者アカウントの自動削除によるセキュリティリスクの排除を行わなければ、システムリプレイスの効果は半減してしまいます。利用状況を一元管理することで、無駄なライセンス費用を削減し、情報システム部門の工数を大幅に圧縮できます。本記事では、SaaS移行を成功に導くための管理ツールの選び方と、導入前に実践すべき棚卸しの具体的な手順を解説します。

SaaS移行とシステムリプレイスに伴う管理の課題

情シス部門が抱えるSaaS管理の課題

近年、レガシーシステムからの脱却を目指し、全社的なシステムリプレイスやSaaS移行を進める企業が急増しています。それに伴い、「SaaS管理」の重要性がかつてなく高まっています。各部門が独自にSaaSを契約することで、情報システム部門が把握しきれない「シャドーIT」が蔓延し、セキュリティリスクが増大しています。

また、システムリプレイスの過程で、利用されていないアカウントや重複した機能を持つツールが放置され、無駄なライセンス費用が発生しているケースも少なくありません。さらに、従業員の入退社に伴うアカウントの付与・削除作業が手動で行われている場合、作業漏れによる情報漏洩のリスクや、情シス部門の業務負荷の増大が深刻な課題となっています。

こうした課題を解決し、セキュリティの強化とコスト最適化を両立するために、SaaS管理ツールの導入が急務とされています。

SaaS管理ツールの導入メリットと効果

SaaS管理ツール導入による業務効率化のメリット

SaaS管理ツールを導入することで、企業は主に以下の3つの大きなメリットを得ることができます。

1つ目は、 セキュリティリスクの低減 です。社内で利用されているすべてのSaaSを可視化し、シャドーITを検知することで、不正アクセスや情報漏洩のリスクを未然に防ぎます。また、退職者のアカウントを自動で削除する機能により、アカウントの消し忘れによるインシデントを防止できます。より網羅的なセキュリティ要件を確認したい場合は、SaaS導入のセキュリティ対策とは?オンプレミスとの違いと7つの必須要件もあわせてご覧ください。

2つ目は、 コストの最適化 です。各SaaSの利用状況を正確に把握することで、全く使われていないライセンスや、機能が重複しているツールを洗い出すことができます。これにより、不要な契約を解約し、無駄なITコストを大幅に削減することが可能です。SaaS導入の費用対効果を客観的に測る方法については、SaaSの費用対効果を最大化!失敗しないROI算出とベンダー評価シートの作り方も参考にしてください。

3つ目は、 業務効率化 です。入退社時のアカウント発行・削除作業や、各ツールの権限設定を自動化・一元管理することで、情報システム部門の定常業務にかかる工数を劇的に削減できます。

自社に最適なSaaS管理ツールの選び方と代表例

SaaS管理ツールの選び方と機能比較

SaaS管理ツールは製品によって得意とする領域が異なるため、自社の課題に合わせた選び方が重要です。システムリプレイスやSaaS移行を進める際、選定時には以下の3つのポイントを確認してください。

  • 連携可能なSaaSの数と種類: 自社で利用している主要なSaaSとAPI連携できるかを確認します。特に、独自に導入しているマイナーなツールにも対応できるかが鍵となります。
  • シャドーITの検知能力: 従業員のブラウザ拡張機能やシングルサインオン(SSO)のログから、未許可のSaaS利用を正確に検知できる機能があるかを評価します。
  • コスト分析機能の充実度: 部門別やユーザー別の利用コストを可視化し、ライセンスの最適化提案を行ってくれる機能があると、費用対効果を高めやすくなります。

代表的なSaaS管理ツール3選

国内でよく利用される代表的なSaaS管理ツールと、それぞれの特徴は以下の通りです。自社の目的に合致するツールを比較検討してください。

ツール名強み・特徴こんな企業におすすめ
マネーフォワード Admina300種類以上のSaaSと連携可能。コスト可視化と退職者のアカウント削除漏れ防止に強み。連携させたいSaaSの種類が多く、ライセンス費用を可視化したい企業
ジョーシス (Josys)SaaSアカウントと従業員のITデバイス(PCなど)を一元管理できる。入退社処理の自動化に特化。PCなどの端末管理も含めて情シス業務を丸ごと効率化したい企業
Bundle組織図ベースでの権限管理が可能。入退社や異動時のアカウント発行・削除作業の自動化に優れる。人の出入りや組織改編が激しく、権限管理の工数が膨大になっている企業

自社でSaaS管理ツールを開発・提供する側の視点については、SaaS管理ツール開発のポイント!事業者が知るべき顧客課題と戦略 も参考にしてください。

また、管理ツールの導入に加えて、レガシーシステムからの脱却や全社的なSaaS移行を検討している場合は、外部の専門家を活用することも有効です。詳しくはSaaS導入で失敗しない!費用対効果を高めるコンサル支援の選び方もあわせてご覧ください。

導入前に実践すべきSaaS棚卸しの手順

SaaS管理ツールを導入する前に、まずは自社で現在どのようなSaaSが使われているのかを手動で把握する「棚卸し」を行うことが成功の秘訣です。

まずは、経理部門と連携し、クレジットカードの明細や経費精算の履歴から、SaaSの支払い記録を洗い出します。これにより、各部門が独自に契約しているツールを発見できます。SaaS特有の経理業務や会計処理について確認したい場合は、SaaS経理の教科書|オンプレとの違いとソフトウェア会計処理のルール完全解説 も参考にしてください。

次に、全従業員に対してアンケートを実施し、業務で使用しているツールをヒアリングします。この際、公式に許可されていないツールであっても、業務上必要であれば利用実態を正確に報告してもらうような心理的安全性のあるコミュニケーションが重要です。

棚卸し管理シート(Excel/スプレッドシート)の必須項目例

ヒアリングや経理データを元に、以下のような項目をスプレッドシート等にまとめて一元管理します。

  • SaaSツール名・プラン名: どのサービスの、どのプランを契約しているか
  • 利用部門・管理者: どの部署が利用し、社内の誰が管理責任者か
  • 契約形態・更新月: 月額か年額か、自動更新のタイミングはいつか
  • 付与アカウント数と実稼働数: 契約ライセンス数に対し、実際に月に1回以上ログインしているのは何人か
  • 月額費用・年間費用: ツールにかかっているトータルコスト

棚卸しによって現状を可視化した上でSaaS管理ツールを導入すれば、「どのSaaSを優先して連携すべきか」「どの部署のアカウントを削減すべきか」が明確になり、ツールの効果を最大限に引き出すことができます。

SaaS管理における失敗事例と教訓

SaaS管理においてよくある失敗事例から、実践的な教訓を学びましょう。

ある従業員数300名の企業では、システムリプレイスを機にSaaS管理ツールを導入したものの、現場への周知不足から反発を招きました。ツールの導入目的を「監視」と捉えられた結果、業務に必要なフリーツールの利用まで隠蔽され、かえってシャドーITの実態が見えなくなる事態に陥りました。結果として、導入から半年経ってもライセンス費用は10%しか削減できませんでした。

この失敗から得られる教訓は、ツールによる監視強化だけでは根本的な解決にならないということです。

重要なのは、なぜSaaS管理が必要なのか、それが「無駄なコストを削減し、浮いた予算を従業員の利便性向上に回すため」や「個人のセキュリティ責任を減らすため」といったメリットを丁寧に説明することです。ガバナンスと利便性のバランスを取りながら、全社的な理解を得るプロセスが不可欠です。

運用管理の具体的なロードマップについては、SaaS運用管理の最適化ロードマップ|シャドーIT対策とガバナンス強化 をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

SaaS管理ツールは中小企業でも必要ですか?

はい、必要です。中小企業であっても、従業員が独自に無料のSaaSを利用しているケースは多く、情報漏洩のリスクは変わりません。また、限られた予算の中でITコストを最適化するためにも、利用状況の可視化は非常に有効です。

無料のSaaS管理ツールはありますか?

一部の機能が制限された無料プランや、無料トライアルを提供しているツールは存在します。まずは無料トライアルを活用して自社の環境に合うか検証し、必要に応じて有料プランへ移行することをおすすめします。

シャドーITを完全に防ぐことは可能ですか?

完全に防ぐことは困難ですが、SaaS管理ツールによる検知と、社内ルールの整備・教育を組み合わせることで、リスクを最小限に抑えることは可能です。定期的な棚卸しとモニタリングを継続することが重要です。

まとめ

SaaSの利用が当たり前となった現代において、SaaS管理は企業のセキュリティとコストを左右する重要な課題です。

  • シャドーITの可視化と退職者アカウントの管理による セキュリティ強化
  • 利用状況の把握による ライセンスコストの最適化
  • アカウント管理の自動化による 情報システム部門の業務効率化

これらを実現するために、自社の課題に合ったSaaS管理ツールを選定し、導入前の棚卸しを確実に行うことで、安全かつ効率的なSaaS運用体制を構築してください。

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伊藤翔太

伊藤翔太

大学卒業後、外資系IT企業にてSaaS製品の法人営業とカスタマーサクセスを経験。その後、国内のBtoBスタートアップに参画し、新規SaaS事業の立ち上げからグロースまでを牽引しました。現在はSaasラボの専属ライターとして、SaaS事業者に役立つ実践的な最新トレンドやノウハウを発信しています。

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