SaaS運営・カスタマーサクセス
伊藤翔太伊藤翔太

チャーンレートの計算方法と目安|SaaS・サブスクの平均値と解約防止策

SaaSやサブスクリプションビジネスにおけるチャーンレート(解約率)の計算方法と平均値・目安を解説します。自社の解約率が高いか低いか市場ベンチマークと比較し、解約率を下げるための実践的なカスタマーサクセス戦略を紹介します。

チャーンレートの計算方法と目安|SaaS・サブスクの平均値と解約防止策
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SaaS・サブスクビジネスの持続的な成長には、解約の兆候を早期に検知する仕組みが不可欠です。自社のビジネスモデルに適したチャーンレートの計算方法を導入し、数値を正しく評価することで、効果的な解約防止策を打つことができます。本記事では、具体的な計算式から業界別の目安、そして解約率を下げるための実践的な戦略までを網羅的に解説します。

チャーンレートの重要性

成長のグラフとビジネスの持続的成長のイメージ

正確なチャーンレートの計算方法を確立して自社の現状を分析することは、SaaS事業の生命線です。新規顧客の獲得コスト(CAC)は既存顧客の維持コストの数倍かかると言われています。そのため、解約率を低く抑えることが収益性の向上に直結します。

SaaS市場が成熟する中、チャーンレートとともに重要になるのがLTV(顧客生涯価値)です。LTVの最大化や収益化に向けた具体的なアプローチについては、サブスク ビジネスモデルで収益化するには?図解と事例で学ぶ7つの成功戦略 も合わせて参考にしてください。

チャーンレートの計算方法

チャーンレート 計算方法のポイント2の図解

チャーンレートの計算方法には、大きく分けて「顧客数」をベースにするものと「収益」をベースにするものの2種類があります。自社のビジネスモデルに合わせて、適切な指標を選択することが重要です。

顧客チャーンレート(カスタマーチャーン)

顧客チャーンレートは、特定の期間内に解約した顧客の割合を示す指標です。計算式は「期間内の解約顧客数 ÷ 期間開始時の総顧客数 × 100」となります。

たとえば、月初に100社の顧客がおり、その月に5社が解約した場合、月次顧客チャーンレートは5%です。単一プランのサービスや、顧客あたりの単価が均一なB2Cサブスクリプションでよく用いられます。なお、解約にまつわる顧客トラブルを未然に防ぐ仕組みづくりについては、サブスクリプション解約・返金トラブルを防ぐ規約と対応 もご確認ください。

収益チャーンレート(レベニューチャーン)

収益チャーンレートは、解約やダウングレードによって失われた収益の割合を示します。計算式は「期間内に失われた収益 ÷ 期間開始時の総収益 × 100」です。

複数の料金プランがあるB2B SaaSでは、顧客数だけでなく収益ベースでの把握が欠かせません。上位プランへのアップグレードによる増収分を差し引いた「ネットレベニューチャーンレート」を追うことで、事業の真の成長力を測ることができます。

現場で運用する際の注意点

算出した数値を現場の改善活動に活かすためには、解約の定義を社内で明確に統一することが不可欠です。上位プランから下位プランへのダウングレードをネガティブな指標としてチャーンに含めるか、完全にサービス利用を停止したアカウントのみを解約とするかによって、結果は大きく変わります。

社内の運用体制や指標設計に課題を感じている場合は、カスタマーサクセス部門の役割を再定義することが重要です。サポートの標準化や社内体制の構築に悩む場合は、カスタマーサクセスと営業の違いとは?役割と目標設定を分ける8つのポイント を参考に、専門的な知見を取り入れることも一つの手段です。

業界別チャーンレートの目安

チャーンレート 計算方法のポイント3の図解

自社の解約率が高いのか低いのかを客観的に判断するためには、市場のベンチマークを把握することが不可欠です。ここでは、最新の動向とターゲット層別のチャーンレートの目安を解説します。

B2B SaaSの最新ベンチマーク

B2B SaaSのチャーンレートは、市場環境の変化や競争の激化により変動しています。UserMotionの調査によると、2023年に4.4%まで上昇してピークを迎えましたが、2024年には4.2%へとわずかに低下しました(出典: SaaS Churn Rate Benchmarks 2024 - UserMotion)。

自社の数値を算出する際は、この4%前後という水準を一つの目安として評価に組み込みます。自社の数値が業界平均を大きく上回っている場合は、プロダクトのオンボーディングプロセスに課題がある可能性が高いと判断できます。

ターゲット層別の目安

SaaSのチャーンレートの平均や、サブスクのチャーンレートの平均は、ターゲットとする顧客層や提供するサービスの性質によって大きく変動します。同業他社や類似のビジネスモデルを持つ企業の基準と比較することが求められます。

契約形態・ターゲット層チャーンレートの目安特徴・傾向
B2B SaaS 全体4.2%〜4.4%2023年から2024年にかけての平均的な推移。ベンチマークの基準となる。
エンタープライズ向け1%〜2%導入ハードルが高くスイッチングコストも大きいため、解約されにくい。
SMB(中小企業)向け3%〜7%企業の業績変動や予算削減の影響を直接受けやすく、やや高めになる。
B2C サブスクリプション5%〜10%ユーザーの嗜好の変化が早く、B2Bと比較して解約率が高い傾向にある。

契約期間が解約率に与える影響

チャーンレート 計算方法のポイント5の図解

チャーンレートを分析する際、顧客の契約期間を考慮することは非常に重要です。契約スパンが異なれば、解約率の基準値も大きく変動します。

月間契約と複数年契約の違い

SaaSビジネスにおいて、顧客との契約期間の長さは解約率に直結する要素です。One Capital, Incのデータによれば、2.5年以上の複数年契約を結んでいる場合の平均チャーンレートは8.5%に留まります。

一方で、月間契約では16%以上と高い水準になっています(出典: 2024年を乗り切るために知っておきたいSaaSの統計 | One Capital, Inc)。月額プランは導入のハードルが低い分、解約も容易に行われる傾向があります。

セグメント別の集計

この前提を無視して月間契約と複数年契約の顧客を合算して計算してしまうと、特定のプランで発生している大量解約を見逃すリスクがあります。現場での運用においては、月額プランと年額プランごとに顧客データベースを分割してください。

セグメント別に集計を行う仕組みを構築することで、解約の兆候を早期に検知できます。先回りして顧客維持戦略を実行するためには、解像度の高いデータ集計が必須です。

チャーンレート改善施策

チャーンレート 計算方法のポイント6の図解

算出した数値を評価した後は、具体的な改善アクションに繋げることが求められます。ここでは、解約を防ぐための具体的なツールやKPIを活用した実践的な施策を解説します。

オンボーディングの強化とKPI設定

導入初期の月間契約で解約率が高い場合、オンボーディング(初期導入支援)で顧客がサービスの価値(Aha!モーメント)に到達していない可能性が高いです。顧客が自走してツールを使える状態になるまでの期間(Time to Value)を短縮することが早期離脱を防ぎます。

具体的には、Gainsightやpottosなどのカスタマーサクセスツールを導入し、「初期設定完了率」や「主要機能の利用回数」をKPIとして追跡します。ログインが3日以上途絶えた顧客には自動でステップメールを配信し、チュートリアル動画へ誘導するといったシステム的なフォローアップが効果的です。

ヘルススコアを活用した解約予兆の検知

解約を未然に防ぐには、顧客の利用状況をスコア化する「ヘルススコア」の導入が不可欠です。SalesforceやZendeskなどのCRM・CSツールと連携させ、以下の要素でスコアを算出します。

  • 利用頻度: 週あたりのログイン日数やアクティブユーザー数
  • 機能活用度: コア機能の利用状況やデータ入力の頻度
  • サポート依存度: 問い合わせ回数やエスカレーションの有無

ヘルススコアが一定基準を下回った顧客(例: 100点満点中40点以下)に対しては、カスタマーサクセス担当者が能動的(プロアクティブ)に連絡を取り、活用課題のヒアリングや個別レクチャーを実施します。

カスタマーサクセスによる定性的な改善

数値の変動という定量的なデータだけでなく、「なぜ解約に至ったのか」という定性的な顧客の声を集めることも重要です。解約時のアンケートやNPS(ネットプロモータースコア)調査を実施し、プロダクトの改善要望を開発部門へフィードバックする体制を構築してください。

また、金額ベースのネットレベニューチャーンを併せて確認し、アップセルやクロスセルによる収益増加を狙うことも重要です。既存顧客の成功を支援し、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指しましょう。

よくある質問

チャーンレートの計算方法で気をつけるべき点は?

顧客数ベースと収益ベースのどちらを採用するか、自社のビジネスモデルに合わせて決定することが重要です。また、ダウングレードを解約に含めるかなど、社内で定義を統一してから計算を行ってください。

SaaSのチャーンレートの平均はどのくらいですか?

2024年のB2B SaaSにおける平均的なチャーンレートは4.2%前後です。ただし、エンタープライズ向けかSMB向けかによっても水準は異なるため、自社のターゲット層に合わせた目安を参考にしてください。

サブスクのチャーンレートの平均を下げるには?

まずは契約期間やプランごとにセグメントを分けて数値を分析し、解約のボトルネックを特定します。その上で、オンボーディングの改善やカスタマーサクセスによる定性的なフォローを強化することが効果的です。

まとめ

SaaS・サブスクビジネスにおいて、チャーンレート(解約率)は事業の健全性と成長を測る上で最も重要な指標の一つです。本記事では、チャーンレートの正確な計算方法とその評価方法について解説しました。

  • 計算方法の使い分け: 顧客数ベースと収益ベースの指標を理解し、自社のモデルに合わせて適用する。
  • 市場平均の把握: B2B SaaSのチャーンレートは4%前後が目安であり、常に最新の業界動向と比較する。
  • 契約期間の考慮: 月間契約と複数年契約では解約率の傾向が大きく異なるため、セグメント別の分析を行う。
  • 改善施策の実行: オンボーディングの強化やカスタマーサクセスとの連携により、解約の根本原因にアプローチする。

これらのポイントを踏まえ、自社のチャーンレートを正しく理解し、解約防止に向けた効果的な戦略を策定することで、SaaS事業の安定的な成長を実現できるでしょう。

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伊藤翔太

伊藤翔太

大学卒業後、外資系IT企業にてSaaS製品の法人営業とカスタマーサクセスを経験。その後、国内のBtoBスタートアップに参画し、新規SaaS事業の立ち上げからグロースまでを牽引しました。現在はSaasラボの専属ライターとして、SaaS事業者に役立つ実践的な最新トレンドやノウハウを発信しています。

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