個人事業主の事業計画書の書き方|SaaS融資を通す無料テンプレート
SaaSビジネスの立ち上げを目指す個人事業主向けに、融資審査を通過するための事業計画書の書き方を解説します。SaaS特有の収益モデルの組み込み方や、無料で使える個人事業主向けの事業計画書テンプレートの活用法を具体的に紹介します。

SaaSビジネスの立ち上げを目指す個人事業主にとって、事業計画書は融資獲得や事業成長を左右する最も重要な書類です。初期投資が大きく回収に時間がかかるSaaSの特性上、客観的で説得力のある計画がなければ、すぐに資金ショートの危機に陥ります。
本記事では、SaaS特有のKPIや収益モデルを反映した事業計画書の書き方と、無料で使える個人事業主向けのテンプレート活用法、そして具体的な数値シミュレーションのサンプルを解説します。
個人事業主がSaaS事業計画書を作成する目的

個人事業主が事業計画書を作成する最大の目的は、頭の中にあるビジネスアイデアを可視化し、第三者(とくに金融機関の担当者)にその実現可能性を論理的に説明することです。とくにSaaSビジネスの場合、開発期間中の資金繰りやリリース後の顧客獲得戦略が厳しく問われます。
金融機関から融資を受ける際、売上予測や資金繰りの根拠が明確でなければ審査を通過できません。また、事業を継続する上でのリスク管理も重要な判断ポイントです。事前の準備が不十分なまま見切り発車してしまうと、想定外の壁にぶつかりやすくなります。あらかじめ 新規事業の立ち上げはきついと言われる理由 を把握し、計画内に具体的な対策を提示しておくことで、事業の成功確率は大きく高まります。
SaaS特有の収益モデルとKPIの組み込み方

SaaSビジネスは、従来の売り切り型ビジネスとは異なり、サブスクリプション(継続課金)モデルを前提としています。そのため、一般的な小売・飲食業の計画書とは異なり、SaaS特有の指標(KPI)を組み込むことが不可欠です。
重要なKPIと具体的な目標値のサンプル
事業計画書には、以下のKPIを具体的な数値目標として記載します。融資担当者は「LTVがCACを上回っているか(ユニットエコノミクスが成立しているか)」を注視します。
- CAC(顧客獲得単価): 1人の顧客を獲得するためにかかる営業・広告費用。
- サンプル例: リスティング広告費20万円で20社獲得した場合、CACは10,000円。
- LTV(顧客生涯価値): 1人の顧客が契約期間中にもたらす総利益。
- サンプル例: 月額5,000円、平均継続期間20ヶ月の場合、LTVは100,000円。
- チャーンレート(解約率): 既存顧客がサービスを解約する割合。SaaSでは月次3%以下を目指すのが一般的です。
理想的なSaaSビジネスでは「LTV ÷ CAC > 3」が健全な目安とされています。これらの数値を根拠とともに提示することで、計画の説得力が増します。
市場ニーズとPMFの検証
計画の精度を高めるためには、提供するサービスが本当に市場に求められているかを検証するプロセスが欠かせません。事業計画書の段階で、顧客の課題を深く理解し、自社のサービスが市場に受け入れられる状態、すなわち PMF(プロダクト・マーケット・フィット)の達成 を意識した戦略を練ることが重要です。
融資審査を通過する資金計画と収益シミュレーション
SaaS事業は、初期のシステム開発やマーケティングに多額の費用がかかる一方で、収益は月額料金として少しずつ回収するため、初期段階では赤字になりやすい(Jカーブ効果)という特徴があります。
そのため、資金ショートを防ぐための綿密なキャッシュフロー計画を盛り込んだ個人事業主向けの事業計画書を作成することが求められます。
具体的な資金計画のサンプル
融資を通すためには、何にいくら必要なのか(資金使途)を明確にします。
- 初期開発費(設備資金): 外注費、ノーコードツールのアカウント費用など(例:300万円)
- 運転資金(3〜6ヶ月分):
- サーバー維持費(例:月額5万円)
- 広告宣伝費(例:月額10万円)
- 自身の生活費・人件費(例:月額30万円)
自己資金と借入金のバランスを考慮し、いつ単月黒字化(損益分岐点)を達成できるのかを、客観的なデータに基づいて示します。さらに精緻な計画を立てる場合は、【無料エクセル】SaaS事業計画書テンプレートと作り方 を参考に、エクセルで収益シミュレーションを作成して添付するのが効果的です。
また、融資以外の資金調達手段も検討しておくことで、初期の資金繰りに余裕が生まれます。返済不要の資金調達手段として、個人事業主の新規事業で使える助成金・補助金 も合わせて参考にしてください。
無料で使える事業計画書テンプレートの選び方

事業計画書をゼロから作成するのは非常に手間がかかります。効率的に進めるには、無料で提供されている個人事業主向けの事業計画書テンプレートを活用するのがおすすめです。
おすすめの無料テンプレート・ツール3選
- 日本政策金融公庫「創業計画書」
- 融資を受ける際の実質的な標準フォーマットです。IT・ソフトウェア業向けの記入例も公開されており、最も信頼性が高いテンプレートです。
- freee(フリー)事業計画書ツール
- 質問に答えていくだけで、自動で事業計画書が生成される無料ツールです。財務シミュレーションもグラフ化されるため、数字に不慣れな個人事業主に向いています。
- J-Net21(中小企業基盤整備機構)のテンプレート
- ワードやエクセル形式でダウンロードできるシンプルなフォーマットが揃っています。SaaS特有の項目を追記しやすい利点があります。
テンプレート活用の注意点
個人事業主向けの事業計画書テンプレートを利用する際、ひな形をそのまま埋めるだけで終わらせてはいけません。一般的なテンプレートにはSaaS特有の項目が含まれていないことが多いため、前述したCACやLTV、チャーンレートなどのKPI推移を別紙や追記の形で補足する必要があります。自社の強みや独自のビジネスモデルが融資担当者に明確に伝わるようカスタマイズすることが重要です。
よくある質問
SaaS事業の事業計画書で最も重視されるポイントは何ですか?
融資担当者が最も重視するのは、計画の実現可能性と資金繰りの見通しです。とくにSaaSは初期投資の回収に時間がかかるため、黒字化までのキャッシュフローが現実的かどうかが厳しくチェックされます。
個人事業主でもSaaS事業で融資を受けられますか?
はい、可能です。日本政策金融公庫の「新創業融資制度」など、個人事業主でも利用しやすい制度があります。説得力のある事業計画書を作成し、返済能力を示すことができれば融資を受ける確率は高まります。
まとめ
本記事では、個人事業主がSaaS事業を立ち上げる際の事業計画書の書き方について解説しました。SaaSビジネスを成功させるには、サブスクリプション特有の収益モデルやKPIを正しく理解し、それを計画に落とし込むことが不可欠です。
無料の事業計画書テンプレートを活用しつつ、自社のビジネスモデルに合わせてカスタマイズすることで、融資担当者を納得させる説得力のある事業計画書を作成しましょう。作成した計画書は融資獲得のためだけでなく、事業を成長させるための羅針盤として継続的に活用してください。

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伊藤翔太
大学卒業後、外資系IT企業にてSaaS製品の法人営業とカスタマーサクセスを経験。その後、国内のBtoBスタートアップに参画し、新規SaaS事業の立ち上げからグロースまでを牽引しました。現在はSaasラボの専属ライターとして、SaaS事業者に役立つ実践的な最新トレンドやノウハウを発信しています。

