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伊藤翔太伊藤翔太

個人事業主の事業計画書の書き方|公庫9項目×無料テンプレート完全ガイド【2026年版】

個人事業主の事業計画書は「日本政策金融公庫の創業計画書9項目」をベースに作るのが最短です。無料テンプレート4選の使い分け、業種別の記入例、融資審査で必ず聞かれる売上根拠の書き方、SaaS起業ならではのKPIの組み込み方まで、一次ソース基準でまとめた2026年版ガイドです。

個人事業主の事業計画書の書き方|公庫9項目×無料テンプレート完全ガイド【2026年版】
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個人事業主の事業計画書は、 日本政策金融公庫が公開している「創業計画書」フォーマットの9項目 をベースに書けば、融資審査で必要な要素をすべて満たせます。フォーマットを自作する必要はなく、公庫のひな型と無料テンプレートをそのまま使うのが最短ルートです。

本記事で得られる内容は次の3点です。

  • 日本政策金融公庫の創業計画書9項目に沿った、個人事業主の事業計画書の書き方と記入例
  • 無料で使える事業計画書テンプレート4選の比較(公庫・freee・マネーフォワード・J-Net21)
  • 融資審査で必ず聞かれる「売上根拠」「資金使途」「返済原資」の数字の作り方

SaaS事業のように初期投資が大きい業態でも、9項目に沿ってLTV・CAC・チャーンレートなどの指標を「事業の見通し」欄に落とし込めば、審査担当者に十分伝わる計画書になります。

個人事業主の事業計画書とは?日本政策金融公庫の9項目で書くのが基本

事業計画書を作成する目的

個人事業主の事業計画書は、開業時の融資申請や補助金申請で第三者に事業の実現可能性を説明するための書類です。決まった様式は法律上ありませんが、日本政策金融公庫の「創業計画書」が実質的な標準フォーマットとして広く使われています。

公庫の創業計画書には、次の9つの記入項目が定められています。

  1. 創業の動機
  2. 経営者の略歴等
  3. 取扱商品・サービス
  4. 取引先・取引関係等
  5. 従業員
  6. お借入の状況
  7. 必要な資金と調達方法
  8. 事業の見通し(月平均)
  9. 自由記述欄

この9項目を埋めれば、融資審査で必要な情報の大半を網羅できます。個人事業主が一から構成を考える必要はありません。公庫の公式サイトからWord・PDF形式で無料ダウンロードでき、業種別の記入例も9業種公開されています(出典: 日本政策金融公庫 各種書式ダウンロード)。

事業計画書と創業計画書の違い

「事業計画書」と「創業計画書」はほぼ同じ意味で使われますが、厳密には次のように区別されます。

  • 創業計画書: 公庫が定める融資申請用の書式。創業前〜創業後7年以内の事業者が対象。
  • 事業計画書: より広い概念で、創業後の事業者が補助金申請・銀行融資・社内検討で使う書類全般。

個人事業主が開業時の融資を申し込む場合、まずは公庫の創業計画書(9項目)を作り、それをベースに補助金や民間銀行向けに項目を追記していくのが効率的です。資金調達手段全体の選び方は 個人事業主の資金調達方法6選 で整理しています。

個人事業主向け事業計画書テンプレート4選の比較

事業計画書をゼロから作るより、無料テンプレートをダウンロードして書き換える方が圧倒的に早く、抜け漏れも減ります。個人事業主が利用しやすい代表的な4つのテンプレートを比較します。

テンプレートの活用

無料テンプレート比較表

テンプレート提供元形式特徴こんな個人事業主に向いている
創業計画書日本政策金融公庫Word / PDF融資審査の実質標準。9業種の記入例付き公庫融資を申し込む全員(必須)
創業計画をつくる弥生(資金調達ナビ)Webフォーム質問に答えるだけで自動生成。業種別ガイドあり数字が苦手・初めて作成する人
フリーランス・個人事業主向けテンプレートマネーフォワード クラウド会社設立Word / Excelフリーランス向けに項目を簡略化サービス業・受託業の個人事業主
事業計画書ひな型J-Net21(中小企業基盤整備機構)Word / Excel公的機関提供で安心。業種を問わず汎用的SaaS・製造など独自項目を足したい人

出典: 日本政策金融公庫 / マネーフォワード クラウド / 各サービス公式サイト

公庫融資なら「創業計画書」が最優先

公庫の融資を申し込むなら、 他のテンプレートで作っても結局は公庫の創業計画書フォーマットへの転記が必要 です。最初から公庫のフォーマットで書き始めるのが最も無駄がありません。

なお、Excelで売上シミュレーションを精緻に作りたい場合は、9項目の本体を公庫フォーマットで作り、別紙としてExcelの収支表を添付する形が一般的です。SaaSのようにサブスクリプション収益の積み上げを見せたい場合の作り方は SaaS事業計画書テンプレートと作り方 で詳しく解説しています。

個人事業主の事業計画書の書き方|公庫9項目の記入例

公庫の創業計画書9項目について、個人事業主が押さえるべき書き方のポイントと記入例を順に整理します。

1. 創業の動機

「なぜこの事業を、なぜ今、自分が始めるのか」を3〜5行で簡潔に書きます。趣味の延長や思いつきと判断されると審査で大きく不利になります。

書くべき要素は次の3点です。

  • 課題を発見した具体的なきっかけ(前職での経験・顧客の困りごと等)
  • 自分が解決できると考える根拠(実績・スキル・人脈)
  • 創業のタイミングが今である合理的理由(市場拡大・制度変更等)

記入例: 「前職のWeb制作会社で年間30社の中小企業から『勤怠管理が紙ベースで月20時間の集計工数がかかる』という相談を受けてきた。クラウド勤怠SaaSは大手向けで月額3万円以上が中心で、従業員10名以下の事業者には高額。月額3,000円の小規模事業者向けSaaSを開発・提供するため、前職で得たノードコード開発スキルと顧客基盤を活かして創業する。」

2. 経営者の略歴等

学歴より「事業と関連する職歴」を中心に書きます。次の3点を意識します。

  • 事業に直結する職務経験の年数と具体的な実績(売上・担当顧客数等)
  • 保有資格・受講した専門研修
  • 過去の失敗経験と、そこから学んだこと(自己認識の深さを示せる)

公庫は経営者の経験を非常に重視します。職歴と事業内容に整合性があるほど審査は通りやすくなります。

3. 取扱商品・サービス

提供する商品・サービスを3つ以内に絞って書きます。それぞれについて次の4点を記載します。

  • 商品・サービス名と価格
  • 想定顧客(業種・規模・地域)
  • 既存商品との違い(差別化ポイント)
  • セールスポイント(価格・機能・サポート等)

「業界初」「日本一」など根拠のない主張は逆効果です。具体的な数字や比較対象を示します。

4. 取引先・取引関係等

販売先・仕入先・外注先を実名で書きます。創業前で取引先が確定していない場合は「想定取引先」として、商談中の企業名や引き合い件数を記載します。

  • 販売先: 企業名 / 取引内容 / 売上構成比(%) / 回収条件(月末締め翌月末払い等)
  • 仕入先 / 外注先: 企業名 / 仕入内容 / 仕入構成比 / 支払条件

回収サイトと支払サイトのズレは資金繰りに直結するため、審査担当者が必ず確認します。

5. 従業員

個人事業主の場合、開業時は「事業主のみ」が一般的です。家族従業員(青色事業専従者)を入れる予定があれば人数と業務内容を書きます。

6. お借入の状況

住宅ローン・自動車ローン・カードローン・奨学金など、申込者本人の個人借入をすべて記載します。 ここで申告漏れがあると審査で致命的に不利 になります。公庫は信用情報を必ず照会するため隠せません。

7. 必要な資金と調達方法

「必要な資金(資金使途)」と「調達方法」を左右の表でバランスさせます。両者の金額は必ず一致させます。

必要な資金(記入例: SaaS事業の場合)

項目金額内訳
設備資金200万円パソコン2台・サーバー初期構築費・ツール年間費
運転資金300万円6ヶ月分の生活費・広告宣伝費・外注開発費
合計500万円

調達方法

項目金額
自己資金200万円
親族からの借入50万円
日本政策金融公庫250万円
合計500万円

自己資金は「創業資金総額の10分の1以上」が公庫の融資要件です(新規開業資金等)。自己資金が少なすぎると審査通過は困難です。

8. 事業の見通し(月平均)

「創業当初」と「軌道に乗った後(1年後)」の2時点で、月平均の損益を試算します。

項目創業当初軌道に乗った後(1年後)根拠
売上高30万円120万円単価3,000円 × 顧客数
売上原価5万円15万円サーバー費・ツール費
人件費0円0円事業主のみ
家賃5万円5万円自宅按分
広告宣伝費10万円15万円リスティング広告
その他経費5万円10万円通信費・消耗品費等
利益5万円75万円

審査で最も重視されるのが、この売上の根拠です。「客単価 × 顧客数 × 購入頻度」のように、必ず計算式と根拠データを示します(参考: 日本政策金融公庫 創業計画の書き方)。

9. 自由記述欄

差別化要因・将来ビジョン・補助金活用予定など、9項目に収まらなかった訴求ポイントを書きます。SaaS事業であれば、ここでLTV・CAC・チャーンレートなどの指標と中長期の見通しを補足するのが効果的です。

業種別の記入例|SaaS・受託開発・物販の書き方の違い

公庫が公開する記入例は9業種ありますが、SaaSや受託開発など新興業種は含まれていません。業種特性に応じて重点的に書く項目が変わります。

SaaS・サブスクリプション事業の記入例

SaaSは初期投資が大きく回収に時間がかかるため、「8. 事業の見通し」で Jカーブ(初期赤字→単月黒字化)の説明 が必須です。次の3指標を自由記述欄に補足します。

  • CAC(顧客獲得単価): 1顧客を獲得するのにかかる広告・営業費用。計算式は「広告費 ÷ 獲得顧客数」。
  • LTV(顧客生涯価値): 1顧客が解約までにもたらす総利益。計算式は「月額単価 × 粗利率 ÷ チャーンレート」。
  • チャーンレート(解約率): 月次の解約率。SaaSでは月次3%以下が健全な目安です。

健全性の目安は「LTV ÷ CAC ≧ 3」「CAC回収期間 ≦ 12ヶ月」です(出典: Wantedly: SaaSのLTV/CAC > 3xの根拠)。

PMF(プロダクト・マーケット・フィット)の検証プロセスや既存事業の難しさは、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)の達成新規事業の立ち上げはきついと言われる理由 で詳しく解説しています。

受託開発・コンサルティング事業の記入例

受託業は「取引先」の信頼性で評価される業態です。「4. 取引先・取引関係」に 創業前から内諾を得ている見込み顧客 を実名で書けるかが審査の分かれ目です。

  • 内諾済み顧客名と契約予定金額(月額または案件単位)
  • 担当者の役職と過去の取引経緯
  • 売上構成比(特定顧客への依存度が30%を超えると審査でリスク指摘される)

物販・EC事業の記入例

物販は「仕入れ」「在庫」「決済」の資金繰りが審査の焦点です。

  • 仕入先と支払サイト(前払い・月末締め翌月末払い等)
  • 在庫回転率の想定(月次でいくらの在庫を抱えるか)
  • ECモール手数料・決済手数料の控除後の実質粗利率

融資審査を通過する事業計画書のポイント

SaaS特有のKPI

公庫の融資担当者が事業計画書で見ているのは、次の4点に集約されます。

1. 売上根拠が「計算式 + 客観データ」で説明できているか

「月商100万円を目指す」のような希望的観測ではなく、「客単価 × 顧客数 × 購入頻度」の計算式と、その数値の根拠(市場規模・競合の実績・自身の見込み顧客リスト)が必須です。

2. 資金使途が明確で、金額が必要な根拠を示せているか

「運転資金300万円」だけでは不十分で、「サーバー費5万円 × 6ヶ月 + 広告費20万円 × 6ヶ月 + 生活費30万円 × 6ヶ月」のように内訳と期間を明示します。

3. 返済原資(月々の返済額の根拠)が利益と整合しているか

借入金額500万円・返済期間7年・金利2%なら、月々の返済額は約64,000円です。「8. 事業の見通し」の月利益がこの金額を上回り、生活費も賄えることを示します。

4. 自己資金の出所が説明できるか

公庫は自己資金の通帳履歴を確認します。直前に親族から振り込まれた「見せ金」は審査で必ず指摘されます。最低でも創業の半年以上前から計画的に貯めた資金であることを示せる通帳を準備します。

返済不要の資金調達手段も並行検討しておくと、初期の資金繰りに余裕が生まれます。個人事業主の新規事業で使える助成金・補助金持続化補助金の事業計画書サンプル【2026年版】 も合わせて検討してください。

事業計画書を作る5ステップ

ゼロから書き始めるとどこから手を付けていいか分からなくなります。次の5ステップで進めると、1〜2週間で公庫提出レベルの計画書が完成します。

  1. 公庫の創業計画書テンプレートをダウンロードする公庫公式
  2. 「1. 創業の動機」「2. 経営者の略歴」を先に書く (自分の頭の中にある情報なので一気に書ける)
  3. 「3. 取扱商品」「4. 取引先」「7. 必要な資金」を書く (外部との関係・必要な数字を整理)
  4. 「8. 事業の見通し」をExcelで試算してから転記する (売上の計算式を作り込む)
  5. 第三者(税理士・商工会議所・公庫の事前相談)にレビューを依頼する

商工会議所や公庫の窓口では、提出前の事前相談を無料で受け付けています。初稿を作ったら必ず一度レビューを通すと、自分では気付かない論理矛盾を指摘してもらえます。

よくある質問

個人事業主の事業計画書は何ページ書けばよいですか?

公庫の創業計画書はA3用紙1枚(裏表)が標準で、これに別紙でExcel収支表や補足資料を1〜3枚添付するのが一般的です。本体を10ページ以上の長文にする必要はなく、論点が絞れた簡潔な書類のほうが審査でも好印象です。

SaaS事業の事業計画書で最も重視されるポイントは何ですか?

融資担当者が最も重視するのは、計画の実現可能性と資金繰りの見通しです。SaaSは初期投資の回収に時間がかかるため、黒字化までのキャッシュフローが現実的か、LTV ÷ CACが3倍以上の健全な水準か、チャーンレートの想定が業界平均(月次3%以下)と整合しているかが厳しくチェックされます。

個人事業主でもSaaS事業で融資を受けられますか?

可能です。日本政策金融公庫の「新規開業資金」「女性、若者/シニア起業家支援資金」などは個人事業主でも申し込めます。説得力のある事業計画書を作成し、自己資金10分の1以上と返済能力を示すことができれば融資を受けられる確率は高まります。

テンプレートをそのまま使うと審査に不利になりますか?

ひな型をそのまま使うこと自体は問題ありません。むしろ公庫の創業計画書のように「審査担当者が読み慣れたフォーマット」を使うほうが好印象です。注意すべきは、テンプレートの記入例の文章をコピーして使い回すことです。記入例はあくまで参考にとどめ、自分の事業の具体的な数字と固有名詞で書き換えます。

事業計画書の数字が達成できなかった場合、融資はどうなりますか?

事業計画書は約束ではなく、現時点での見通しの提出です。計画通りに行かなくても直ちに融資が引き上げられるわけではありません。ただし、毎月の試算表や決算書で計画と実績の乖離が大きい場合、次の追加融資は通りにくくなります。半期に1回は計画を見直し、必要に応じて公庫の担当者に状況報告する運用が望ましいです。

まとめ

個人事業主の事業計画書は、日本政策金融公庫の創業計画書9項目をベースに、無料テンプレートを活用して効率的に作成できます。本記事の要点は次の3つです。

  • 9項目フォーマットの活用: 公庫の創業計画書を起点に書けば、融資審査で必要な要素を網羅できる
  • 数字の根拠: 売上は「計算式 + 客観データ」、資金使途は「内訳 + 期間」で示す
  • 業種特性の反映: SaaSはJカーブとLTV/CACを、受託は内諾顧客を、物販は資金繰りを重点的に書く

作成した事業計画書は融資獲得のためだけでなく、事業を成長させる羅針盤として継続的に活用してください。半期に一度は計画と実績を突き合わせ、ズレが大きければ計画自体を見直すサイクルを回すことで、事業の成功確率は確実に高まります。

業務を変えるSaaSと、社内AIシステムを。

B2B 向けの SaaS プロダクトや、企業の業務課題を解決する社内向け AI システムを、企画・設計・開発・運用まで一貫対応。マルチテナント・課金・権限管理といった SaaS 基盤から、LLM を活用した社内ナレッジ検索・ドキュメント生成・業務自動化まで、事業と組織の成長に直結するシステムを構築します。

伊藤翔太

伊藤翔太

大学卒業後、外資系IT企業にてSaaS製品の法人営業とカスタマーサクセスを経験。その後、国内のBtoBスタートアップに参画し、新規SaaS事業の立ち上げからグロースまでを牽引しました。現在はSaasラボの専属ライターとして、SaaS事業者に役立つ実践的な最新トレンドやノウハウを発信しています。

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