SaaS戦略
伊藤翔太伊藤翔太

【SaaS向け】ビジネスモデル図解の作り方8ステップ!無料テンプレートで収益構造を可視化

SaaSビジネスの収益構造や価値提供を可視化する「ビジネスモデル図解」の作り方を解説します。チーム内の認識を揃え、投資家への説明に役立つ無料テンプレートの活用方法と作成のコツを紹介。

【SaaS向け】ビジネスモデル図解の作り方8ステップ!無料テンプレートで収益構造を可視化
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SaaS事業の立ち上げや拡大において、複雑な収益構造や業務フローを関係者間で共有できず、プロジェクトが停滞するケースは少なくありません。事業の全体像を視覚的に整理し、KPIと連動させたビジネスモデル図を作成することで、この課題は解決できます。本記事では、SaaS事業を成功に導くビジネスモデル図解の作り方を8つの実践的なステップに分けて具体的に解説します。

1. 収益構造と価値提供の流れを可視化する

収益構造と価値提供の流れを可視化するビジネスモデル図

ビジネスモデル図解の第一歩は、誰にどのような価値を提供し、どこから収益を得るのかという基本構造を整理することです。

SaaSは毎月の売上を積み上げるストック型ビジネスであり、顧客体験の質が収益に直結します。そのため、カスタマージャーニーマップを活用してサービスの流れを可視化し、バリューチェーン分析で社内のリソースとお金の動きを一枚の図にまとめることで、事業のボトルネックを早期に発見できます。

例えば、初期費用無料の「フリーミアムモデル」を採用する場合、無料ユーザーから有料ユーザーへの転換率(コンバージョン率)がどこで発生するかを図解上に明記します。新規事業立ち上げの難しさに直面した際も、収益構造が可視化されていれば、どこに課題があるのかを冷静に分析し、迅速に軌道修正を図ることが可能です。

2. 無料のビジネスモデル図テンプレートを活用する

SaaS特化型テンプレートの活用イメージ

ゼロから図解を作成するのではなく、既存のフレームワークやビジネスモデル図のテンプレートを活用することが効率的です。

手法としては、事業の構成要素を9つに分類する「ビジネスモデルキャンバス」や、スタートアップ向けの「リーンキャンバス」、お金とモノの流れをシンプルに表す「ピクト図解」などが代表的です。これらを活用することで、サブスクリプションの課金ポイントなどSaaS特有の要素を漏れなく配置できます。

  • 具体的なツール例: Miro、Figma(FigJam)、Cacooなどのオンラインホワイトボード
  • 無料テンプレートの入手先: Miroverse(Miroの公式ギャラリー)やFigmaコミュニティには、世界中の企業が作成したビジネスモデル図の無料テンプレートが豊富に公開されています。また、PowerPointやCanvaといった一般的なツールでもダウンロード可能です。

【実践的なサンプル】リーンキャンバスの記入例

  • 課題: 中小企業の経理業務の煩雑さ
  • 解決策: AIによる領収書自動入力SaaS
  • 圧倒的な優位性: 既存の会計ソフトとAPIでシームレスに連携できる機能

まずはこうした既存の型をベースに、チーム内で試験的に使ってみることを推奨します。

3. SaaS特有のKPIを図解に組み込む

SaaS特有のKPIを組み込んだビジネスモデル図

単にサービスの流れを描くだけでなく、MRR(月次経常収益)やLTV(顧客生涯価値)、CAC(顧客獲得単価)といった主要KPIを図の中に連動させます。

図解の中の「マーケティング活動」のプロセスにCACを配置し、「顧客との関係構築」のプロセスにLTVやチャーンレート(解約率)を併記します。一般的にSaaSビジネスでは「LTVがCACの3倍以上(LTV > 3×CAC)」であることが健全な指標とされています。

これにより、どの業務プロセスがどの収益指標に直結しているのかが可視化され、緻密な事業計画に落とし込むことが可能になります。指標の動きと事業活動の因果関係が繋がっている図解は、事業の解像度を飛躍的に高めます。

4. NSMや行動データを反映させる

プロダクト戦略の成果を測るためには、事業全体の目標となるNSM(North Star Metric:北極星指標)をビジネスモデルの中心に据えます。

例えば、コミュニケーションSaaSにおけるNSMを「週に3日以上アクティブにメッセージを送信したユーザー数」と設定します。その上で、MixpanelやAmplitudeといったプロダクト分析ツールを用いてユーザーの行動データを可視化し、それをNSMと結びつけて事業構造に反映させることが重要です。

指標がプロダクトのどの機能や顧客体験から生み出されるのかを明記することで、データ駆動型の意思決定が促進され、開発チームとビジネスサイドが同じ目標に向かって動くための強力な羅針盤となります。

5. 投資家向けに図解を使い分ける

投資家向けに図解を使い分けるイメージ

投資家や経営層への事業説明において、図解は成長戦略や収益構造を明確に伝えるための強力な武器となります。

目的に応じてフォーマットを使い分けることが重要です。PitchやGoogleスライド、PowerPointなどのプレゼンテーションツールを用いてビジネスのコンセプトや強みを伝える場合は、直感的に伝わる「ビジネスモデルキャンバス」を使用します。

一方、サービスの流れやそれに伴うお金の動きを詳細に説明し、収益化の実現可能性を裏付ける場合は、金融機関も重視する「事業系統図」を活用します。誰に対して、どのような粒度で情報を伝えるべきかを見極めることが求められます。

6. 開発とビジネスの共通言語にする

開発とビジネスの共通言語としての図解活用

作成した図解は、社内の意思決定や部門間の連携を強化するためのコミュニケーションツールとして運用します。

SaaS開発においては、機能要件とビジネス要件のズレが大きな手戻りの原因となります。作成した図解をNotionやConfluenceなどのドキュメント管理ツール、あるいはJiraやAsanaといったプロジェクト管理ツールに常に埋め込んで企画側と開発側で共有しましょう。

「誰の、どんな課題を、どのように解決するのか」という認識を合わせ続けることがプロジェクト成功の鍵です。部門を超えたメンバーで共通言語として活用することで、開発の効率と精度が向上します。

7. PMF検証のツールとして活用する

描いたビジネスモデル図解が机上の空論になっていないかを確認するため、市場の反応と照らし合わせる検証プロセスが必要です。

図解したバリュープロポジション(顧客への提供価値)が本当に市場で受け入れられるかを検証する過程では、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)のビジネスでの意味 を深く理解することが求められます。

実際にプロトタイプ(MVP)を一部のユーザーに提供し、顧客の課題と自社の解決策が合致しているかをデータに基づいて評価します。必要に応じて図解を素早く修正することで、より確度の高い戦略立案が可能になります。

8. 事業フェーズに合わせてアップデートする

ビジネスモデルの図解は一度完成させて終わりではありません。

事業の立ち上げ期(シード・アーリー)から拡大期(ミドル・レイター)へとフェーズが移行するにつれて、追うべきKPIや注力する顧客セグメントは変化します。例えば、初期は「アクティブユーザー数」を重視していたものが、拡大期には「エンタープライズ顧客のLTV最大化」へと移行するかもしれません。

定期的に図解を見直し、最新の事業戦略と実態が乖離していないかをチェックする運用体制を構築することが、SaaSビジネスを成功に導きます。常に最新の状態に保つことで、組織全体が同じ方向を向いて成長戦略を実行できるようになります。

まとめ

SaaSビジネスの成功には、複雑な事業構造を明確に可視化するビジネスモデル図解の作り方が不可欠です。

収益構造の把握から無料テンプレートの活用、KPIとの連動、そして継続的なアップデートまで、本記事で紹介した8つのステップを実践してください。これらを意識することで、単なる図解に留まらず、事業成長を加速させる強力な戦略ツールとして活用できるでしょう。

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B2B 向けの SaaS プロダクトや、企業の業務課題を解決する社内向け AI システムを、企画・設計・開発・運用まで一貫対応。マルチテナント・課金・権限管理といった SaaS 基盤から、LLM を活用した社内ナレッジ検索・ドキュメント生成・業務自動化まで、事業と組織の成長に直結するシステムを構築します。

伊藤翔太

伊藤翔太

大学卒業後、外資系IT企業にてSaaS製品の法人営業とカスタマーサクセスを経験。その後、国内のBtoBスタートアップに参画し、新規SaaS事業の立ち上げからグロースまでを牽引しました。現在はSaasラボの専属ライターとして、SaaS事業者に役立つ実践的な最新トレンドやノウハウを発信しています。

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