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伊藤翔太伊藤翔太

【無料エクセル】SaaS事業計画書テンプレートと作り方|収益シミュレーション5つの手順

SaaSやサブスクビジネスの収益計画に最適な、エクセル形式の事業計画書テンプレートとその作り方を解説します。LTVやCACなどの重要指標を組み込んだ具体的なシミュレーション手法がわかります。

【無料エクセル】SaaS事業計画書テンプレートと作り方|収益シミュレーション5つの手順
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SaaS事業の立ち上げや資金調達を成功させるには、精緻な事業計画書が不可欠です。特にSaaS特有の継続課金モデルやKPIを正確に反映した収益シミュレーションは、事業の成否を分ける重要な要素となります。無料で使えるエクセル形式の事業計画書テンプレートを活用し、自社のビジネスモデルに合わせてカスタマイズすることで、説得力のある計画書を作成できます。本記事では、無料テンプレートを最大限に活かし、投資家を納得させるSaaS事業計画書のエクセルでの作り方を、具体的なポイントを交えながら解説します。これにより、事業の解像度を高め、成功への道筋を明確に描くための実践的な知識が得られるでしょう。

SaaS事業計画に特化したエクセルテンプレートの選び方

SaaSビジネスの新規立ち上げや事業化において、精緻な収益シミュレーションは欠かせません。現在の日本のSaaS市場は堅調な成長を続けており、IDC Japanの調査によると、2023年の国内SaaS市場規模は前年比20.5%増の1兆5,003億円と推計されています。さらに、2023年から2028年にかけて年間平均成長率(CAGR)13.9%で推移し、2028年には2兆8,945億円に達すると予測されています(出典: 週刊BCN+)。

SaaS市場の成長と事業計画の重要性

このような著しいSaaS市場の成長の波に乗るためには、従来の売り切り型ソフトウェアとは異なる、SaaS特有の継続課金モデルを正確に反映した事業計画の策定が不可欠です。

無料でダウンロードできるエクセル形式の事業計画書テンプレートを活用するのは効率的ですが、自社のビジネスモデル(月額定額、従量課金、ID数課金など)に合わせて入力項目を柔軟にカスタマイズできるかどうかが重要な判断ポイントとなります。実践的なエクセルテンプレートは、以下のような3つのシート構成に分かれているのが理想的です。

  1. 前提条件シート(入力用): 顧客獲得単価(CAC)、初期単価、アップセル率、チャーンレートなどの変数を入力するシート。
  2. 計算ロジックシート: 前提条件をもとに、新規顧客数、既存顧客数、解約数を月次で自動計算するシート。
  3. P&L(損益計算書)シート: 売上高、原価、販管費(カスタマーサクセス費含む)、営業利益などを出力するサマリーシート。

汎用的なテンプレートをそのまま埋めるのではなく、SaaS特有の解約率(チャーンレート)や、既存顧客からのアップセル・クロスセルによる収益増加見込みを反映できるように、エクセルの数式を調整してください。新規事業の計画段階では、想定外のコストや顧客獲得の壁に直面することも多いため、「新規事業の立ち上げはきつい」と言われる理由とは?失敗を回避して成功に必要なこと3選も参考にしながら、事業の解像度を高めていく視点が求められます。

要点を整理すると、インターネット上で入手できる無料のエクセル事業計画書テンプレートを土台にしつつも、自社のユニットエコノミクスを正確に可視化できるようカスタマイズを施すことが第一歩です。エクセルで作成した事業計画書テンプレートの柔軟性を最大限に活かし、説得力のある収益シミュレーションを構築していきましょう。

必須KPIとMRRの分解シミュレーション

SaaSビジネスの立ち上げや資金調達において、説得力のある数値計画は欠かせません。無料で使えるエクセル形式の事業計画書テンプレートを探す際、単に売上と経費を入力するだけの簡素なフォーマットでは、SaaS特有のビジネスモデルを正確に表現できません。本セクションでは、SaaS事業の収益シミュレーションにおいてテンプレートに組み込むべき必須のKPI(重要業績評価指標)と、その判断ポイントを整理します。

投資家が重視するユニットエコノミクスの可視化

SaaS企業が資金調達を行う際、投資家は表面的な売上高だけでなく、ユニットエコノミクス(顧客1あたりの採算性)を厳しく評価します。具体的には、LTV(顧客生涯価値)とCAC(顧客獲得単価)のバランスがビジネスとして成立する大前提となります。

一般的に、LTVとCACの比率はユニットエコノミクスを測る上で重要な指標とされており、「3以上」が健全な比率の目安です。顧客獲得にかけたコストの3倍以上の収益を、その顧客から生涯にわたって回収できる状態が理想です。したがって、事業計画書を作成する際は、マーケティング費用や営業人件費からCACを算出し、解約率と顧客単価からLTVを導き出し、その比率(LTV/CAC)が自動計算されるエクセルテンプレートを選ぶことが重要です。

MRR(月次経常収益)を4要素に分解した精緻な予測

SaaSビジネスの収益計画において、MRR(月次経常収益)の予測は事業の生命線です。精緻なシミュレーションを行うためには、MRRを単一の数字として扱うのではなく、以下の4つの構成要素に分解して予測を立てる必要があります。

  • 新規MRR: 新規顧客から得られる収益
  • Expansion MRR: 既存顧客のアップセルやクロスセルによる収益増加分
  • Downgrade MRR: 既存顧客のダウングレードによる収益減少分
  • Churn MRR: 既存顧客の解約による収益減少分

たとえば、初期の月額単価を1万円とした場合のエクセルでの具体的な計算例は以下のようになります。

  • 新規MRR: 月間50社獲得 × 1万円 = 50万円
  • Expansion MRR: 既存10社が上位プラン(1.5万円)へ移行 = 5万円
  • Downgrade MRR: 既存5社が下位プラン(5千円)へ移行 = -2.5万円
  • Churn MRR: 既存5社が解約 = -5万円

このように入力することで、当月のNet MRR(純増分)は「50 + 5 - 2.5 - 5 = 47.5万円」と正確に算出できます。SaaSビジネスの成長を最大化するには、これらの要素を理解し、それぞれに適切な戦略を立てることが重要です。新規獲得のペースだけでなく、既存顧客からの収益拡大をどのように計画しているかを明示することで、事業計画の解像度が飛躍的に高まります。

MRRの分解の図解

チャーンレートとコンバージョン率の適切な設定

チャーンレート設定の図解

SaaSビジネスの立ち上げにおいて、事業の成功を左右するのが精緻な収益シミュレーションです。初期段階で適切な予測を立てるためには、エクセルでの事業計画書の作り方を工夫し、各変数を独立して計算できるモデルを構築する必要があります。ここでは、収益予測の精度を高めるための具体的な指標設定について解説します。

チャーンレート(解約率)が収益予測に与える影響

収益予測の精度を大きく左右する変数が、チャーンレート(解約率)です。新規顧客を順調に獲得できていても、穴の空いたバケツのように顧客が流出していては、いずれ成長は頭打ちになります。

一般的に、SaaSの成長企業におけるチャーンレートは月次で1%前後が理想的といわれています。月次5%を超えるチャーンレートは、LTV(顧客生涯価値)を著しく低下させ、事業モデルの持続可能性に問題がある可能性を示唆します。事業計画のシミュレーションでは、チャーンレートを数パターン(例:楽観的0.5%、現実的1.5%、悲観的3.0%)設定し、それぞれが3年後の収益にどのようなインパクトを与えるかを検証できるフォーマットが求められます。

また、解約率を低く抑えるためには、プロダクト自体の品質や安定性が不可欠です。事業計画の策定と並行して、技術的な基盤を固めることも忘れてはいけません。開発フェーズの技術選定については、【2026年版】SaaS開発言語と環境の選び方|失敗しない技術選定7つの基準も参考にしてください。

コンバージョン率の適切な設定

フリーミアム戦略や無料トライアル期間を設けるSaaS企業の場合、無料ユーザーから有料ユーザーへのコンバージョン率が収益予測の鍵となります。この転換率は、プロダクトが提供する価値や、導入時のオンボーディングの質に大きく左右されます。

そのため、初期段階の収益シミュレーションでは「無料から有料への転換率を3%」といった保守的な数値を設定し、実績データが集まり次第、エクセル上で柔軟に見直せるようにしておくことが求められます。

料金プランの変更や無料期間の延長など、事業戦略の変更(ピボット)が発生した際に、特定のセル(変数)を少し書き換えるだけで全体の収益予測が連動して更新される柔軟性があることです。複雑すぎるマクロが組まれたブラックボックス化されたものよりも、数式の構造がシンプルで自社に合わせてカスタマイズしやすいテンプレートを選ぶことが重要です。

SaaS特有のコスト構造とカスタマーサクセス費の算出

SaaSビジネスの立ち上げにおいて、無料で配布されているエクセル形式の事業計画書テンプレートを活用する際、重要なポイントとなるのが「SaaS特有のコスト構造の正確な反映」です。一般的なテンプレートの経費項目を埋めるだけでは、継続課金モデルの収益実態を正しく表現できません。

SaaSコスト構造の具体化

事業計画を作成する際は、変動費と固定費を細かく見積もる必要があります。SaaSベンチャーでは、原価計算の考え方が通常の製品販売と異なります。特に人件費、クラウドインフラ費用、マーケティング費用などをどう見積もるかが事業計画の精度を左右します。

初期の開発費だけでなく、導入後の顧客を支援するカスタマーサクセス費は、LTVの向上に直結するため、適切に計画へ組み込む必要があります。以下の表は、SaaS事業で考慮すべき主なコスト項目です。

コスト分類主な項目計画時のポイントと具体的な数式例
開発・運用費開発費、クラウドインフラ費用、保守費用例:月間のクラウドインフラ費用を初期10万円とし、顧客100社ごとに5万円増加する数式を組む。
顧客獲得費 (CAC)マーケティング費用、営業部門の人件費広告宣伝費や展示会出展費などから、1顧客の獲得単価を算出する。
顧客維持費 (CRC)カスタマーサクセス費、サポートツール導入費顧客の定着化(オンボーディング)や解約防止に向けた投資を惜しまない。
一般管理費バックオフィス人件費、オフィス賃料事業規模の拡大に比例して増加する固定費を予測する。

このようにSaaSのコスト構造を細分化し、エクセル上で例えば =100000+INT(顧客数/100)*50000 のように具体的な数式を使ってシミュレーションすることが重要です。

融資審査を通過する補足資料の作成とPDCA

資金調達の場面において、日本政策金融公庫などが提供する創業計画書は、事業の全体像や資金使途を伝えるために非常に有効です。しかし、指定の一般的なフォーマットには、SaaSビジネス特有の継続課金モデルやKPI(LTVやCACなど)を直接的に記載する欄が限られています。

審査担当者を納得させる補足資料の活用

そのため、審査担当者への理解を深めるには、公庫の指定フォーマットに加えて、補足資料を添付することが有効です。自社の目的に合った無料のエクセル事業計画書テンプレートなどを活用し、SaaS特化の収益シミュレーションシートを作成して提出します。これにより、事業の成長シナリオと資金使途の妥当性を客観的な数値で証明でき、融資や投資の判断ポイントを明確に伝えることが可能です。

融資審査とPDCAサイクルの図解

計画の実行と継続的な改善

作成した計画は、一度提出して終わりではありません。定期的な事業計画の見直しを行い、実際の数値とエクセル上のシミュレーションの差異を分析することが不可欠です。このPDCAサイクルを回すことで、市場の変化や想定外のコスト増減に素早く対応できます。

自社のビジネスモデルに合わせて項目をカスタマイズし、運用・改善しやすいフォーマットを構築することが事業成長の鍵となります。

まとめ

SaaS事業の成功には、精緻な事業計画書とその裏付けとなる収益シミュレーションが不可欠です。本記事では、無料で使えるエクセル形式の事業計画書テンプレートの活用方法から、SaaS特有のKPIを盛り込んだ計画書の作り方まで、以下のポイントを解説しました。

  • 市場動向の反映とカスタマイズ: 無料テンプレートを土台に、自社のユニットエコノミクスを可視化するカスタマイズが重要です。
  • SaaS特有KPIの組み込み: LTV、CAC、MRR、チャーンレートといった指標を正確に組み込み、投資家が重視する視点を反映させます。
  • 収益予測の構造化: 各KPIが独立して計算できるモデルを構築し、多角的なシミュレーションを可能にします。
  • コスト構造の正確な反映: SaaS特有のコストが収益に与える影響を深く理解し、計画に落とし込みます。
  • 継続的な改善サイクル: 計画は一度作って終わりではなく、PDCAサイクルを回し、常にアップデートしていく視点が求められます。

これらのポイントを押さえることで、単なる数字の羅列ではない、事業の実態を正確に反映した説得力のある事業計画書を作成できます。事業の解像度を高め、持続的な成長を実現するための羅針盤として、エクセルテンプレートを最大限に活用してください。

業務を変えるSaaSと、社内AIシステムを。

B2B 向けの SaaS プロダクトや、企業の業務課題を解決する社内向け AI システムを、企画・設計・開発・運用まで一貫対応。マルチテナント・課金・権限管理といった SaaS 基盤から、LLM を活用した社内ナレッジ検索・ドキュメント生成・業務自動化まで、事業と組織の成長に直結するシステムを構築します。

伊藤翔太

伊藤翔太

大学卒業後、外資系IT企業にてSaaS製品の法人営業とカスタマーサクセスを経験。その後、国内のBtoBスタートアップに参画し、新規SaaS事業の立ち上げからグロースまでを牽引しました。現在はSaasラボの専属ライターとして、SaaS事業者に役立つ実践的な最新トレンドやノウハウを発信しています。

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