事業開発と事業企画の違いとは?営業との役割分担やコンサルに頼らない自社推進のコツ
曖昧になりがちな事業開発と事業企画、そして営業の役割の違いを明確に定義します。SaaS企業において、外部コンサルタントに丸投げせず、自社リソースで新規事業を推進できる組織体制の作り方を解説します。

事業成長が停滞している組織では、新規事業を担う担当者と既存事業を管理する担当者の役割が曖昧になっているケースが少なくありません。
事業開発と事業企画、そして営業の役割の違いを明確に定義し、適切に分業することが、事業を前進させる最大の鍵です。本記事では、それぞれの役割の違いや、SaaS企業で実践される具体的な組織体制の作り方、コンサルに丸投げせず自社で推進するためのヒントを解説します。
事業フェーズと役割の明確化
事業開発と事業企画は、担当する事業フェーズによって役割が明確に分かれます。まずはそれぞれの対象領域と役割を整理します。
対象とする事業フェーズの違い
事業企画は主に既存事業を対象とし、具体的な戦略立案や計画作成を担います。たとえばSaaSビジネスにおいて、CAC(顧客獲得単価)やLTV(顧客生涯価値)、チャーンレート(解約率)といった重要KPIの設計や予算の策定、実績のモニタリングを通じて事業方針を明確にするのが主な仕事です。
一方、事業開発は新規事業の立ち上げや推進を担い、市場調査からMVP(実用最小限のプロダクト)の検証までを行い、 0から1を生み出して売上を作る仕組み を構築します(出典: 事業企画と事業開発の違い - リブ・コンサルティング)。

SaaSにおける各部門の連携と役割の変化
事業開発と営業の役割の違いについても理解しておく必要があります。SaaSビジネスでは、営業は単に目の前の商談をクロージングするだけでなく、顧客の潜在的な課題を吸い上げ、事業開発部門へフィードバックすることで、6ヶ月から3年先の成長を見据えた プロダクトの伸びしろを作る 役割も求められます(出典: 営業は「売る」の先へ。事業を動かす「SaaS営業」のリアルと未来|富澤 仁 - note)。
SalesforceなどのCRM(顧客関係管理システム)に入力された貴重な顧客情報を営業部門だけに留めず、事業開発や事業企画とデータ連携させることが、継続的な顧客価値の提供につながります。
また、SaaS企業では事業フェーズに応じて組織マネジメントの型が変化します。スタートアップ期は小さなチームで柔軟に動き、グロース期に入ると部門ごとの役割分担と仕組み化が不可欠です。新規事業を軌道に乗せる過程は困難を伴うため、あらかじめ課題を把握しておくことが重要です。立ち上げフェーズの具体的なハードルについては 「新規事業の立ち上げはきつい」と言われる理由とは?失敗を回避して成功に必要なこと3選 も参考にしてください。
企業の成長フェーズと開発体制の変化

事業開発と事業企画の役割は、企業の成長フェーズや開発体制によって大きく変化します。SaaS企業においては、スタートアップ期は「小さなチームでの柔軟な動き」が求められますが、グロース期に入ると「役割分担と仕組み化」が不可欠です。このフェーズ移行期において、ゼロから事業を創出する事業開発と、既存事業の成長を仕組み化する事業企画の分業が進みます。
特にシステム開発を伴う新規事業では、立ち上げ期に外部ITベンダーへ依存する企業は少なくありません。レバテックの調査によると、約7割の企業が外部ベンダーに業務を委託していますが、現在6割超の企業が内製化へシフトしています(出典: 6割超の企業が外部委託から内製化へシフト、「脱ベンダー依存」の動きも顕著に - レバテック)。IT・金融業界でこの脱ベンダー依存の動きは顕著ですが、最大の障壁はIT人材不足と社内ノウハウの欠如です。
外部依存が長期化すると、ベンダーロックインによる高額な開発費用や不具合のリスクが高まります。実際、外部委託から内製化へ切り替えることで、障害発生件数を93%削減し、開発コストを60%削減した事例も存在します(出典: ベンダーロックインされたSaaSの内製化 - 株式会社Exas)。
ここから見えてくる事業開発と事業企画の役割の違いを判断するポイントは、外部リソースを活用して素早く市場参入を果たすフェーズ(事業開発)から、自社にノウハウを蓄積し、内製化によるコスト削減と品質向上を仕組み化するフェーズ(事業企画)への移行です。内製化に向けた体制構築を進める際は、【2026年版】SaaS開発で失敗しない言語・環境の選び方|最適な技術選定7つのポイントも参考に、自社に最適な環境を整備することが重要です。
内製化に向けた人材要件と育成アプローチ
組織体制の構築において、事業フェーズに伴う役割の変化と、内製化に向けた人材要件の捉え方は重要です。

多くの日本企業はDX推進において外部ITベンダーへの依存度が高いものの、IT・金融業界を中心に内製化への意欲が高まっています。しかし、最大の障壁はIT人材の不足であり、特に現場のスキル不足が課題です。この解決策として、kintoneやBubble、Glideといったノーコードツールの活用により、プログラミング経験のない現場担当者主導で素早くプロトタイプを開発する取り組みが期待されています。
こうした変革期において、事業開発と事業企画の役割を明確に判断するポイントは、事業フェーズに合わせたマネジメントの型です。SaaS企業では、スタートアップ期に「厳密な分業」ではなく「小さなチームでの柔軟な動き」が求められます(出典: 事業フェーズ別・SaaS組織マネジメントの型 - 株式会社イプロス)。不確実性の高い環境でゼロから事業を立ち上げるのが 事業開発 の役割です。
一方、グロース期に入ると「みんなで何でもやる」状態から脱却し、役割を明確に分けて組織をスケールさせる必要があります。このフェーズで、既存の枠組みを整備し、効率的な運用体制を構築するのが事業企画の役割です。
両者の役割は異なりますが、顧客成果を最大化するには横断的に活躍できる人材の育成が欠かせません。オンボーディングの標準化やナレッジの内製化を仕組みとして設計し、属人化を防ぐことが組織成長の鍵となります(出典: SaaS人材育成の成功パターン5選)。
組織体制の構築と外部パートナーの活用
事業開発と事業企画の違いを明確にする上で、組織内の役割分担と外部リソースの活用方針は重要なポイントです。事業の成長には、各部門が専門性を発揮しながら連携する仕組みが不可欠です。

専門特化した組織体制の構築
事業開発のフェーズでは、事業をスケールさせる実行力が求められます。SaaSビジネスの分野では「The Model(ザ・モデル)」型の組織体制として、マーケティング(リード獲得)、インサイドセールス(商談創出)、フィールドセールス(成約)、カスタマーサクセス(LTV向上・解約防止)の4つに営業組織を機能分割し、各段階の連携を通じて売上拡大を目指す手法が主流です(出典: SaaSのあるべき営業組織の体制とは?分業のメリットや注意点も含めて解説 - 株式会社TimeSkip)。
事業企画は、こうした分業体制の設計や数値管理を得意とします。対して事業開発は、既存の枠組みを超えて新たな顧客価値を創出することが求められます。
外部パートナーとの巧みな役割分担
事業開発を推進する際、すべてを自社で抱え込む必要はありません。事業開発においてコンサルティング会社などの外部パートナーを活用する際は、丸投げを避けた明確な役割分担が成功の鍵を握ります。
外部パートナーは「技術的な尖兵」や「構造設計の専門家」として初期の難関を突破する力を提供し、社内担当者は「業務の熟達者」および「継続的な改善の担い手」として基盤を築くことが推奨されています(出典: 外部パートナーを活用して内製化を加速する方法 - 株式会社GRI)。
コンサルタントに丸投げするのではなく、外部の専門知識と社内の自社ビジネス理解を掛け合わせる 巧みな役割分担 こそが、リスクを抑えつつ組織全体の対応力を向上させる内製化戦略の根幹です。事業企画が定めた仕組みの上で、事業開発が外部の知見を適切に取り入れながら組織を牽引することが、両者の役割を最大化するポイントとなります。
まとめ
事業開発と事業企画の違いの核心は、事業の成長フェーズに応じて異なる役割を担う点にあります。事業開発は「0から1」の新規事業創出と市場開拓を、事業企画は「1から100」の既存事業の最適化と成長戦略を推進する役割です。
本記事では、両者の違いを以下のポイントで解説しました。
- 対象事業フェーズと役割分担の明確化
- 企業の成長フェーズと開発体制に応じた役割の変化
- 内製化に向けた人材要件と育成アプローチ
- 組織内の役割分担と外部リソースの活用戦略
両者の役割を正しく理解し、自社のフェーズに合わせた組織体制を構築することが、持続的な事業成長の鍵となります。外部コンサルに頼りすぎず、自社で推進できる強い組織を目指しましょう。

業務を変えるSaaSと、社内AIシステムを。
B2B 向けの SaaS プロダクトや、企業の業務課題を解決する社内向け AI システムを、企画・設計・開発・運用まで一貫対応。マルチテナント・課金・権限管理といった SaaS 基盤から、LLM を活用した社内ナレッジ検索・ドキュメント生成・業務自動化まで、事業と組織の成長に直結するシステムを構築します。

伊藤翔太
大学卒業後、外資系IT企業にてSaaS製品の法人営業とカスタマーサクセスを経験。その後、国内のBtoBスタートアップに参画し、新規SaaS事業の立ち上げからグロースまでを牽引しました。現在はSaasラボの専属ライターとして、SaaS事業者に役立つ実践的な最新トレンドやノウハウを発信しています。
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